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【インタラクティブ・ミーティング<7月3日> 開催報告】.... 根来研究所長

ELフォーラム登録者各位

2003年7月3日(木)に、早稲田大学に隣接するリーガロイヤルホテルで、第2回インタラクティブミーティング「これからのネット戦略 ―ネットバブル崩壊後のネット活用―」が行われました。ご参加いただいた方にお礼を申し上げます。

さて、今回の催しの各スピーカーの話を簡単に要約すると以下のようなものでした。

1.前川徹(早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員教授)

講演:「これからのネット戦略への示唆:ECビジネスの成否を分けたもの 」
ネットバブル崩壊後も消費者向EC市場は拡大している。バブル崩壊によって、成功企業の秘訣がわかってきた。それは、低価格競争に参加せず、価格以外の要素で競争優位を築くことである。この際に、顧客第一主義で創意工夫を続けることが肝心だ。ネットでは、「同じ商品が異なった価格で売られる価格分散はなくなり、オンライン市場の価格は限界コストに近くなる」と言われた。しかし、現実には価格分散が残っており、成功している企業は、「価格がもっとも安いサイト」ではない。ネットでも差別化が重要なのである。

2.根来龍之(早稲田大学 IT戦略研究所所長・大学院商学研究科教授)

コメント1:「ネットビジネスからネット戦略へ」
あらゆる企業がネットとリアルの両方の顧客インタフェースを、多かれ少なかれ考える時代になった。その意味では、ネットビジネスではなくネット戦略が問われている。また、このことはモルタルの経営資源とネット上の経営資源、あるいはモルタルビジネスとネットビジネスとを併せ持つスタイル、すなわちクリック&モルタルの時代が事業形態のメインになるということでもある。そして、経営資源の組み合わせによる差別化=掛け算の差別化が競争戦略の基本になってきた。こう考えると、倒産や買収されたネット企業が、なぜ成功しなかったのが分かる。

3.北上真一(株式会社ジェイティービーWEBトラベル事業部 事業部長)

コメント2:「オンライン旅行予約・決済システム<JTB INFO CREW>の経験から」
リアルの旅行代理店として実績のある当社は、オンライン旅行代理店でもある。消費者向けに、国内・海外ツアー、宿泊プランを販売してきた。このビジネスには、当社の豊富な経験からの商品開発やおすすめ情報が反映している。また、当社のオンライン旅行予約・決済システムの大きな柱は、実は、BTS(ビジネス・トラベル・システム)である。これは、Webによるサービスとして、出張の手配から精算までをアウトソーシングで請負うものである。お客様企業は、当社のサービスで、間接コスト(手配や精算の手間)を大幅に削減することができる。このBTSは、当社が、宿泊先の紹介だけでなく、決済までも行う代理店だからこそできるビジネスモデルである。


会場からも活発な意見・質問が提出されました。ネットチャネルは、コストがかかり収益性が低いのではないか、WEBとモバイルのどちらを重視すべきか、掛け算の差別化の具体的成功例は何か、などがその内容です。全体として、ネットバブル崩壊後も、ネットの重要性は下がっていないこと、ネット市場での競争あるいはネットチャネルの工夫は、モルタル企業にとっても、ますます重要になってきていることが確認されました。

なお、上記の前川教授(IT戦略研究所研究員)の講演要旨を、
http://www.waseda.ac.jp/projects/riim/ の「IT経営ゼミナール」で公開しています。

根来龍之
早稲田大学IT戦略研究所所長・大学院商学研究科教授
negoro@waseda.jp
http://www.waseda.ac.jp/projects/riim/
http://faculty.web.waseda.ac.jp/negoro/